遊びスイッチオンの子猫に触らない 人を咬むこと教えるのと同じ

写真1:スイッチオンの状態で触ることは咬む練習をしているようなもの

写真1:スイッチオンの状態で触ることは咬む練習をしているようなもの

きょうだいと暮らす子猫は、きょうだい猫を追いかけたり追いかけられたりと一日の多くの時間を遊びに費やします。また屋外で過ごす機会がある子猫は、虫や小鳥などを追いかけて過ごします。子猫にとって遊びは大人になって行う縄張り争いや狩りのリハーサルでもあり、正常に発達するためになくてはならないものです。ただし現代の日本では交通事故や猫同士の闘争、伝染病の危険性など猫を安全に外出させることができる場所はほとんどありません。

したがって室内飼育すべきですが、特に室内で単独飼育されている猫は、遊び相手もなく追いかけて捕まえるものもありません。室内で動く刺激は飼い主だけになるので、飼い主を咬むという問題が非常に起こりやすくなります。

遊びであっても飼い主を咬んだり引っかいたりする習慣をつけると、成長後もいろいろな場面で飼い主への攻撃行動が起こりやすくなるため、子猫のうちに人を咬む機会を与えないようにすることが大切です。

猫に咬まれないようにするには、追いかけたり、咬みついたりといった猫の正常な行動のはけ口を作ってあげることが大切です。以下の点に注意しながら子猫期に人を咬む経験をできるだけさせないように育てましょう。

猫が「咬んで困っている」という人の多くはわざわざ咬むような状況を作っていることが多いのです。たとえば覚醒状態の子猫を撫でたり、抱っこしたりするような、人が好むふれあいを求めると、その刺激で遊びスイッチが入り、咬んで来ることがほとんどです。写真1は子猫がスイッチオンの時に触っているところで、このようなタイミングに触るとすぐに遊びモードになって咬んできます。

小さい子猫のうちは咬む力も弱く咬まれてもいいと思う飼い主さんが多いのですが、これは咬むことを教育しているのと同じで、成長とともに咬む力が強くなってからやめさせようと思っても、すでに行動パターンとして定着しており、やめさせるのは難しくなります。簡単にスイッチが入る状態の子猫に触ることは禁物で、このような時にすべきことはおもちゃを使ってコミュニケーションを取ることです。

捕食動物である猫は、子猫期にあらゆるチャンスを逃さず獲物を捕らえる訓練をします。動くものを追いかけ捕まえ咬みつく技術を習得することは、捕食動物にとって将来生き残るために必須なのです。また遊びの中で周囲の仲間との付き合い方も覚えていきます。

将来生きていくために必要なエネルギーや好奇心は、刺激不足の室内環境で飼育すると飼い主へのじゃれ咬みやいたずらなどの困った行動に注がれるようになります。したがって、室内の安全な環境であっても、できるだけ自然界で得られるような刺激を与える工夫が必要なのです。以下のような遊びを取り入れて刺激不足を解消しましょう。

〇食べ物はおもちゃに入れて与える
〇飼い主がおもちゃで一緒に遊ぶ(毎日15分×2回以上・途中休憩を入れる)
〇一緒に遊ぶおもちゃは数日ごとに交換し、新しいおもちゃを与え、空き箱や袋、登れる場所などを与える

遊ぶ回数や時間はあくまでひとつの目安です。当院で行政から引き取った子猫のきょうだいたちを見ていると起きている時間の大半を遊びに費やしており、1日30分程度の遊びでは十分ではないことがよくわかります。毎日遊んであげていても咬んで来るといった場合、まだ遊ぶ時間が足りないと考えてください。遊びで咬んで来る頻度が減るくらい十分遊んでもらってください。

ただし、フルタイムの仕事を持つ人が猫につき合える時間にはそれぞれ限界があると思います。最近では自動で動く一人遊びの猫用のおもちゃもいろいろ市販されているので、それらを利用するのも良いでしょう。ただし、自動で動くおもちゃは人との遊びに比べて飽きやすいので、それにたよりすぎず、補助程度に利用するのが良いでしょう。

手や足を咬まれたら応戦するのが自然な行動です。しかしそれをしてしまうと猫はますます興奮して咬んで来るでしょう。やればやるほど攻撃をかわすのがうまくなったり、より激しく攻撃するようになったりします。つまり応戦するのは人を咬む練習をしているのと同じなのです。

では無視をすれば良いのでしょうか? たとえ無視したとしても咬む行動自体が楽しいのでやはり咬むことはなくなりません。最も良いのは咬まれないようにすることです。狙っている様子があれば咬まれる前に動きを止めましょう。あるいはおもちゃを投げるなど別の動く対象に注意をそらすのも有効です。

スイッチオフの時におだやかなふれあいを

スイッチオフの時におだやかなふれあいを

子猫にとってどんなおもちゃより良い刺激となるのは、他の猫との遊びです。従って最も効果が高いのは同じ年頃の子猫同士で遊ばせることです。子猫は相手を狩りの対象に見立てて追いかけたり、追いかけられたりして楽しく遊ぶので、飼い主に向けられる遊びによる攻撃行動の頻度を大幅に下げることができます。

ただし猫は犬のようにすぐに仲良くなることはなく、成猫はもちろん子猫同士でも最初は互いに警戒し、遊び始めるまでに時間がかかります。

そのため一番良いのはきょうだいの子猫を2頭で飼育することです。きょうだいがいない場合にも社会化期の子猫同士であればほとんどの場合短時間のうちに仲良くなってくれます。

ただし月齢が進むに連れて慣れるのに時間がかかるようになります。成猫になってしまうと他の猫と仲良くなるのに時間がかかったり、場合によっては受け入れてくれないこともあります。それは猫が大人になると縄張り内に他の猫が侵入することを嫌う性質があるためです。

残念ながら子猫期から仲良く育ったきょうだい猫同士でも大人になってからけんかし始めることもあります。その場合、刺激不足が原因になっていることが多いので遊びなどのニーズを見直してあげる必要があります。また早めに不妊去勢手術を行い、望まない妊娠や雄同士のけんかを避ける必要があります。

2頭飼えない場合、きょうだいや同じ年齢の子猫と定期的に遊ばせるのも有効です。当院ではスタッフがきょうだいの猫を1頭ずつ飼い、お互いの家に定期的に連れて行ったり、我が家で預かるなどして遊ばせています。そのため、キャリーでの移動や車や電車にのること、家族以外の人や犬と会うことなど自然と社会化が出来てとても扱いやすい猫に育ちます。

また知人で子猫を飼っていらっしゃる方があれば、一緒に遊ばせてあげるというのも一つの方法です。この際にもいきなり会わせるとけんかになる可能性がありますので、ケージ越しに見せて一緒に好物を与えるなど、様子を見ながら少しずつ会わせるようにしましょう。また猫同士で遊ばせる場合には、念のため事前に健康状態を確認しましょう。

猫を撫でようとした時、猫がじゃれて咬みついてくる時はスイッチオンの状態と考えてください。このタイミングでふれあうのは猫に人を咬むことを教育しているのと同じです。スイッチオンの時には撫でたりせずにおもちゃを使ってしっかり遊んでください。遊び疲れてゆったり眠っている時には触っても咬むことはありません。これがスイッチオフの時と考えてください。

寝ているのに触るとすぐに咬みついてくるのであれば、その猫にとっては遊びが十分足りていないと考えるべきでしょう。触っても咬んで来ない時、すなわちスイッチオフの時に優しく撫でて気持ちよく体を触る練習をすることで、猫は人との穏やかなふれあいを学び、それを楽しむようになります。

病院が苦手なネコも、健康のために定期的に動物病院で受診しましょう。Instagramで動物病院の写真投稿を募集中!投稿1件につき100円を不幸な猫のために寄付します。

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